SaaSの歴史・普及とビジネスの変化

SaaSの歴史・普及とビジネスの変化

Akky AKIMOTO @ サイボウズ・ラボ

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@akky / サイボウズ・ラボ
SaaSの歴史・普及とビジネスの変化

自己紹介

  • サイボウズ・ラボというところで働いています
  • サイボウズという仕事のSaaSを提供している会社の研究所です
  • アメリカを中心に、海外のSaaSを調査する仕事をしています
    • 普段調べてること関連で面白そうなことをお話できればと思います
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SaaSの歴史・普及とビジネスの変化

SaaSとは?

  • ソフトウェアのレンタル
    • 初期のコンピューターでは、ソフトウェアはすべて自社で作成するものだった
      • 自社内に置くのが当たり前だった情報システム
    • 他社が開発したソフトウェアを買って使うパッケージソフトウェアの時代
      • 自社に設置したハードウェアに、買ってインストールして使う
    • インターネットの登場(1970)・普及(1995)・通信速度の向上により、サーバー側で動くソフトウェアをレンタルすることが実用的になった (2000年代初頭)
    • インターネットブラウザの普及により、ブラウザで動くソフトウェアが標準になった
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消費者の日常の中のSaaS

  • メール
  • SNS
  • スケジュール管理・調整
  • ファイル共有
  • 動画
  • ゲーム
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SaaS? サブスクとは違うの?

  • subscription model は、SaaSの集金方法のメジャーな一つだが、同じ概念ではない
  • サブスクだけどSaaSじゃない: Adobe Creative Cloud, 牛乳配達, Netflix(ソフトウェア部分を見るとSaaSともいえる)
  • SaaSだけどサブスクじゃない: GmailやFacebook(無料+広告), 使った量で課金するSaaS, 一度買ったらずっと使えるSaaS
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SaaSじゃないソフトウェア

  • 電子辞書, 冷蔵庫とか洗濯機とかの家電、自動車の制御など独立した製品内のソフトウェア
  • ゲーム機は過渡期(インターネットにつながないと動かない機能も増えている)
  • 銀行や証券会社のソフトウェア
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企業におけるパッケージソフトウェアの普及要因

自社でソフトウェアも作っていた時代から、パッケージソフトウェアの時代へ

  • ソフトウェアを作ることは会社のコア事業ではない
    • いろいろな企業で共通に必要なソフトウェアは、内製するよりも外部から買うほうが安い
      • 会計ソフト、給与計算ソフト、在庫管理ソフト、顧客管理ソフト、など
      • パッケージソフトウェア専業の企業が伸長した時代
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企業におけるSaaSの普及要因

パッケージソフトウェアの欠点を、SaaSが解決する形で普及

  • ソフトウェアの専門家でもないのに、適宜アップデートして運用しないといけない
    • PCやインターネット、ブラウザなど外部要因に合わせてソフトウェアは更新が必要
    • ユーザーが増えたり、利用が増えたりすると、機器の増設やアップデートが必要
    • 更新で失敗したり、業務が止まったりすると、会社の業績に直結する
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SaaSの何が企業にうれしいのか

  • サーバーの運用やアップデートは、サービス提供者がやってくれる
  • お金で機能を使うだけで、細かな運用はサービス提供者がやってくれる
    • 社用車のリースや、コピー機のリースという先例がある
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SaaSの企業への普及の歴史

  • Gmailや宅ファイル便など、消費者向けSaaSの普及が、社員の意識を変えた
    • メールやSNS、ファイル共有サービスなどが勝手に普及、社員はビジネスでも勝手に使いだした
    • 統制が取れない、会社が把握していないソフトウェア・データという問題
      • 企業が同様のものを用意すればよい
  • 利点が上回り、活用している企業が成功しだす
    • ネットワーク効果も (他社はどこも使っているのにうちは使えないの?)
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SaaSの主要なカテゴリ(1)

  • 文書管理
  • 財務会計
  • ERP 企業資源計画
  • HRIS 人事管理・労務管理・給与計算・税務申告
  • 採用管理
  • コラボレーションツール (サイボウズもここ)
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SaaSの主要なカテゴリ(2)

  • CRM 顧客関係管理 ヘルプデスク
  • マーケティング管理
  • BI ビジネスインテリジェンス, データウェアハウス
  • セキュリティ ID管理 SSO, ログと監査
  • 全社検索
  • no-code/low-code (End User Computing)
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SaaSの市場サイズ

  • 米国SaaS市場のサイズ 2060億ドル(=31兆円 Gartner 2023)
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普及の現状

  • 一社あたりのSaaS利用数 112個(2023 BetterCloud調査)
    • COVID-19で増、昨年は減少
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SaaSのメリット

  • 使いたい機能だけ使える
  • 使いたいだけ使える
  • 止めたいときに止められる
  • セキュリティ
    • 同じ機能を何千社に提供しているプロが守る
    • サーバーや保存されてるデータを、ユーザー企業の一社員が直接覗き見たりできない
  • 別のサービスに乗り換えやすい(こともある)
  • 社外からアクセスできる
  • データが自社内に無い(世界中に分散して置ける。大災害でも無くならない)
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SaaSのデメリット

  • 社外からアクセスできてしまう
  • データが自社内に無い(どこにあるかわからない。誰が見るかわからない)
  • シャドーIT(後述)
  • 外部要因で業務が止まりうる (関連: SLA)
    • セキュリティ
  • これ入れたかったけどSaaSじゃないな。ITSとしてのリスク発現事例ではあるけど
    • KADOKAWA, 出前館のマルウェア被害 業務が止まる
    • SaaS的にはAmazon の AWS がダウンして多数のSaaSが止まった事例がある
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シャドウIT問題

企業のあずかり知らぬSaaSなどの利用

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シャドウITの問題点

  • 会社が知らないツール利用によるセキュリティリスク
    • KADOKAWA, 出前館のマルウェア被害 業務が止まる
  • 各人バラバラのツールによる情報共有の不整合や失敗
  • 問題があった際の監査やログが取れない
  • 会社のユーザー管理の外でのアカウントの乱立
  • 退職者が会社のデータにアクセスし続けられる
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SaaSが爆発的に普及できた理由(売り手側)

  • IaaS(Infrastructure)やPaaS(Platform)の普及
    • これらもSaaSの一種。サービスを構築するためのSaaS
    • 個人~数人のチームでもPoC(proof of concept)を作れるように
  • VCエコシステムの成熟
    • 「ここぞ」という時に、お金で時間を買える仕組み
    • 無いサービスを立ち上げることすら可能
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SaaSがあって意味のある特殊なSaaS

  • SaaSの集中ログインサービス Oktaなどいろいろ
  • SaaSの管理サービス BetterCloudなど (日本でもジョーシス=ラクスル子会社 とか)
  • SaaSの割引代行サービス Vendr
  • SaaSの連携接続サービス Zapier/ifttt
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SaaSのバラエティ

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SaaSとAI

  • いろんなSaaSを調査しているが、どこも新機能や今後のロードマップはAIに関するものが多い
    • AIが本当に必要かはともかく、AIを使っていると謳わないと売れない情勢
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SaaSとAI 活用法

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AI対応はお金を取れる

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AIの問題点

  • 計算量の多さ
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SaaSと経営

  • 業務の効率化・省力化
  • 競争力強化
  • コスト削減
  • リスク管理
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まとめ

  • SaaSを活用したビジネスの変化が急激に進行中
  • 間違えるポイントが多々ある
  • それまでになかった仕事のやり方が生まれてきている
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おわり

この資料

感想・質問・間違い指摘等

今日お話したことの中の何かが、みなさんの将来の仕事のヒントになるようなことがあればとても嬉しいです。

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付録: 資料

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付録: 動画資料

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SaaSという言葉を説明なしに出し、次のスライドでSaaSとはにつなげる

- ひとことで言うとソフトウェアのレンタル - 今から見ると当たり前に見えるが、2000年ころにはまだ珍しかった

- みなさんも、普段SaaSやSaaS的なものを多数使っている。特にスマートフォンの普及以降、どこからでもウェブサービスを使えるようになった - ほとんどのソフトウェアは、PCやスマートフォンの中で動いているのではなく、サーバの中で動いた結果を手元で表示更新している

インターネット冷蔵庫とかもあるにはあるけど、普及はしていないね

サイボウズも 1997から2010 ぐらいまで、パッケージベンダだった

- 大企業ほど利用個数は多い。異なる部署は異なるSaaSを使っている、といったことも多いから - 2015年で一社8個ということなので、様々なSaaSが企業の中に入り込んできたのは本当に最近のことなのだなと。アメリカでこれ。アメリカ以外は当然もっと少ない - コロナ禍で増えたのは、リモートワークの普及により、リモートワークに適したツール経由でのコラボレーションが増えたため - 昨年の減少は反動で減った、あるいは整理が進んだのでは

- 不要な機能は買わずに済む (売る側で機能ごとに料金設定していればs) - 必要な時だけ利用を増やす (AWSなど、キャンペーンでアクセスが3倍になるとわかっていれば、サーバを3倍増強する) - 不要になったら止めれば、それ以上出費はない - 乗換は、ベンダーロックインが無いとは言いきれない。しかし競争の中で乗換を容易にする機能も提供されやすい

- SaaS以外のソフトウェアや、スマートフォンなど社員の個人所有デバイスもシャドウITに含まれる - 企業の導入したツールが使いにくい、個人で慣れた道具を使いたい、そのツールが効率が良い、リモートワークで自由に使える雰囲気、などが理由 - 写真に映った何かをボカしたい、で手元のスマホの個人アプリで修正してしまう、とかもシャドウIT

マルウェアの件は例に出ているものはSaaSではない、かもしれないが。SaaSでも起こりうる

利用者側からは、GoogleやFacebookなどにはじまりSaaSが身近な日常になっていたことがある - IaaS: インフラストラクチャを借りる Amazon Web Service など - PaaS: プラットフォームを借りる Amazon Web Service など - ウェブに出してみたSaaSが突然人気になり1000万人に使われても、サーバーを100台増やすことはお金だけの問題になった - 自前でデータセンターを建築してサーバを配置する時代なら、10年計画だったかもしれない

- OKta: FacebookログインとかGoogleログインとか、あれを企業内でSaaSのログインに使うイメージ - BetterCloud: 企業内で使われているSaaSのログを集めて、ログインの監視やセキュリティの監視をする。利用状況を見たり、使われていないユーザーを削除したり - Vendr: 企業がSaaSを買うときに、割引交渉をしてくれる - Zapier: いろいろなSaaSを連携させる。例えば、新しいファイルがDropboxにアップロードされたら、Slackに通知する、とか

- Zoom: 世界初とかでもなんでもないが、COVID-19のタイミングでちょうどいいポジションにいたため、爆発的に普及した - Deel: リモートワークで世界中の人を雇うときに、契約書や給与計算を自動化する。国ごとの雇用法に対応している - Calendly: 予約を自動化する。Zoomと連携して、予約したらZoomのリンクを送る、とか。ゲリラ的に企業に浸透している - tawk.to: ウェブサイトにチャットを設置する。チャットを使って問い合わせを受ける、とか。無料モデルがユニーク。実際に売るのはフィリピンの人力

- NVidiaのGPUは、3Dゲーム、仮想通貨マイニング、ときて今はAIのために売れている - AIを使った機能を皆が使うたびに、化石燃料の消費が増えたりする - モデルの訓練に多数のサーバ、GPU、電力が要るのであり、モデルを使って生成するのはそこまでではない。とは言え少ないわけでもない

- SaaSを知ること、活用すること、が経営にとって重要になってきている - コアでないところを以下に省力化するか。外部やAIに任せるか。 - 漫然と使うとコストがかさむ。安く必要な機能だけを使えると強い - 外につながって仕事しているというリスクをどう管理するか

ここのところをもっと聞いてみたい、とか、今日でなかったけどこういう技術についてはどうなんだ、面白い話はあるか、とかあればぜひ聞いてください。