書評: インド式プログラミングバイブル C++言語とオブジェクト手法入門

インド式プログラミングバイブル C++言語とオブジェクト手法入門、という本を翻訳元のイノソフトさんよりいただきました。

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また、著者を含むインドのIT経営者らによる視察団が東京に来られての出版記念パーティーがあり、そこにも顔を出してきました。衆議院議員のスピーチまであったので、相当力が入っているのかもしれません。

実際にお会いしたヤシャバント・カネットカールさんは物静かな方でした。彼のCの本(これも翻訳されています)はインドでは100万部以上売れていて、大学の授業などでもよく使われているとか。

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同じ英語なのだから、アメリカの書籍を輸入すればそのまま済むようにも思いましたが、両国の間の物価差とかいろいろ要因があっての独自本なのかもしれません。

本の内容は、基本に忠実というか、C++の文法を順番に追っていき、各章で演習が挟まれるというものです。オーソドックスな入門本です。

パーティーでは、カネットカールさん以外の著者のみなさんとも話す機会があり、インドの状況について知りたかったことを聞いてみました。

翻訳された書籍のラインアップを見てもマイクロソフト系の技術が優勢のように見えるけど、オープンソース系はどんな感じなのか、という質問には、やはり米国から仕事を請けている関係上、企業も大学もマイクロソフト系やJava系、メインフレーム系の技術が中心だということ。

また、人件費が安くて優秀な人員が多く、英語もできるのであれば、直接Web2.0的なサービスをインドで立ち上げて欧米に向けてサービスするという人はいないのか、という質問もしたのですが、そういう人はほとんどいないということ。ここはあまり突っ込んで聞けなかったのですが、もしかしたらサーバやネットワークなどのインフラを個人レベルで調達するのが日本や欧米に比べてたいへんなのかもしれないですね。

インドでベストセラーの実績から、CやC++の教科書的な本の翻訳で勝負ということなのかもしれませんが、日本がインドITに対して興味を持っているのはCMMIとかの開発プロセス、マネージメントのところではないかと思うので、「インド式」として注目を得るとしたらそちらのほうがいいのではないかなあ、などとも思うのですけどね。

書評: 「崖っぷち会社」が生まれ変わった3つの方法

「崖っぷち会社」が生まれ変わった3つの方法 ~売り上げが劇的に伸びる勝利のノウハウ!/中山裕一朗

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ネットで情報発信することで、地方の小さな町工場が単価の高い注文をどんどん取れるようになった、という話です。たつをさんの紹介が面白そうだったので読んでみました。

著者は大企業でITに絡む仕事をしたあとに地方に帰って家業を継いだ人で、ある意味IT的な手法を使うことで地方の企業を再生させた、ということになると思いますが、最初は「情報発信」という手段を見つけられずに経営を悪化させたといいます。

情報発信といっても、ブログではありません。今なら「ブログで」と行きそうなものですけど、顧客や同業者がチェックしうるものということで、ファックスやニュースレターでの発信です。自分の親とかを考えても、ブログなんてそうそう読まないでしょうし、メール等はまだまだメインの情報公開手段でありつづけるのでしょうね。ましてやRSSをや。

発信することでさらに情報が集まるようになり、ネタ切れは起こらない、というのは自分の経験からもそう思います。一人一人は、実は言語化すれば相当いろいろなノウハウを持っているけれど、いざブログでも何でも書こうとすると自分の知っている何に価値があるのかがわからない、ということではないでしょうか。書いて反応を得ることで、こんなことでも役に立つ人はいるんだな、とか、じゃあこれはどうだろう、というように次々とネタが出てくるようになるのかもしれません。

書評: おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由

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サイボウズ・ラボの本棚にあったのを借りてきて読みました。最近「サイボウズ・ラボ宛」に本が来ることがあるんだけど、誰かの名指しじゃないと遠慮しあってなかなか読まれないという気もします。

第一部はブログの内容に加筆、第二部と第三部は月刊アスキーに載ってたものを転載したものなので、中島さんのブログを読み、月刊アスキーを毎月読んでいる自分にとっては新しい話はなかったです。

といいつつも、端折りながら最後まで読んでしまったから、一度読んだはずのものでもおもしろいし、おもしろい人たちとの対談はやっぱりおもしろい、ということですね。ブログも月アスも読んでない人にはすごくおもしろいんじゃないかと思います。

世代的にはGAMEとCANDYを作った人というのがすごいところですね。

書評: 馬雲のアリババと中国の知恵

中国市場でeBayと戦っているネットコマースの大企業アリババの歴史や企業文化を、創業者の馬雲(ジャック・マー)さんを中心に書いた本です。

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中国の大手サイトの経営者たちの多くが、武侠小説を読み込んでいたり、武侠小説の大家金庸さんをゲストに呼ぶといったらフォーラムに参加したり、という話が面白いです。大きく成長している中国のネット市場で割拠する群雄の多くが、武侠小説のファンだったりするところが。ま、中国語圏では金庸さんの小説を誰もが読んでいるらしいので、CEO達も読んでいるということかもしれませんけど。

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馬雲という人物は、能弁で思慮深く、おそらく人間的魅力にも溢れているのだろうと思いますが、著者はそこのところはそれほど踏み込めていないようです。馬雲本人とはそれほど話していないのかもしれません。また、アリババという会社は堅実経営のようなのに、著者が少し盛り上がりすぎているのもちょっと気になったところ。

自国に対する思いいれが強く出てしまっているところも散見されますが、国が急速に伸びているときの中の人はこんなものなんだろうなあ、という気もしますし、そのあたりは日本の高度成長期のイケイケ感(知らないけど)と似てるのかもしれませんね。

全体としては、中国ネット会の主要人物やサービスについても知ることができて、読んだ価値はあったかと思いました。

[書評] ドキュメント戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争

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ドキュメント戦争広告代理店という本を読みました。ユーゴスラビア連邦(この時点ではセルビアとほぼ同義)からのボスニア・ヘルツェゴビナの分離戦争の趨勢にアメリカの広告代理店がどのように絡んでいたかを最初から最後まで関係者の証言や資料を洗って記述した本です。

日本を含めた西側の報道では、セルビアが一方的にボスニアに「民族浄化」を仕掛けていたとされがちだし、ミロシェビッチがすべて悪いという風になっていた感がありますが、その背景にはPR会社を(偶然の幸運はあっても)使いこなした国と気にしなかった国という差があり、それが気づいた頃には挽回のできないほどの印象差を生み出した、ということが丹念に、恐ろしいほど客観的中立的に書かれています。

国家間の戦争は人類の活動としては最大級のものだと思いますが、それにすらこのように広告代理店が介在しているのだから、世の中のあらゆる情報の背景にそのような支援者が居たとしても不思議ではないのかな、という気にさせられます。

しかし、広告代理店も悪意があるわけではなく、プロとしてクライアントのために最大限の効果を出そうとしているだけなんですよね。そうなると、正邪や勧善懲悪といったわかりやすい答えを求める読み手側に問題があるということだと思うのだけれど、その問題が解消されることなんてあるのかどうか。