「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ

新聞・テレビなどでよくニュースとして出てくる、調査記事のウソやデタラメにせまる本。

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2000年に出版された本ということで、地震の話は東北ではなく神戸だったりと時代を感じさせるところもありますが、本が問題としている恣意的な結果を求めるためのリサーチや、リサーチから都合のよく見える結果だけを抜き出してのメディアの煽り記事などの問題は、今でも続いているどころか、ネットが普及してからさらにひどくなっているようにも思います。

この本には、ネットのセンセーショナルな「あらたに○○という事実が判明した」「○○%の人が賛成/反対している」という類の記事に対して、その調査の手法や結果の解釈におかしなところがないかを見つけられる人となるための知識が多数提供されています。

また、学者が自分が期待しているような結果が出るようにデータを取捨選択してしまう話や、他の研究者による追試可能性が重要というあたりの話は、最近のSTAP細胞事件でちょうど問題となっていたところで、本自体は以前の本なのにここも面白く読むことができました。

この本が類書と違うもう一つの特徴は、日本の書籍にしては珍しく、おかしな調査を発表した団体や他の研究者を実名で書いているところ。日本の大学教員のキャリアパスに関する問題への批判とあわせ、こんなに直裁で大丈夫かな、と思いました。ここまでいろいろな方面に言及しては、この人自身が仕事を干されたりしないのか心配になったので、読書後にこの著者の谷岡一郎さんのことを少し検索してみました。どうやらこの方、谷岡学園という学校グループの三代目なのですね。自分の大学で教授や学長をやっているという立場だからこそ、自分の処遇や職へのリスク無く、おかしいと思ったことを率直に本に書くことができていたのかなあ、という気もします。だから良い、とか悪い、とかではなく、大学や論文や調査のおかしな点に気づいている人は多数いても、それを本に出したり大きく指摘したりして社会に広く届けられる人はそれほど多くないのかもなあ、などと思った次第。

中国を変えた最強メディア 微博(ウェイボー)の衝撃

読みました。

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・「微博」は「マイクロブログ」という意味に過ぎなくて、ツイッターの中国版、というと一個しかないように聞こえるけれど、たくさんある。有力なものは4大微博で、一番大きいのは新浪微博

・なんでツイッターが禁止で微博はOKなのか。政府のコントロールが効かせられるようになっているから。監視や削除もあれば、政府の意向に沿うような動きをする工作員も多いのではという推測も

・とは言っても、突発的に多数から出てくる事件の報告などを完全に止められるわけではなく、微博のおかげで悪事の隠蔽ができなかった例もいろいろある

本書でいちばんハッと気づかされたのは、マスメディアとソーシャルメディアに対する日本と中国の一般人の持つ期待値がまったく異なることです。

日本では、マスメディアが正しいことを伝え、ネットはいいかげんで間違いや悪事が多い、という印象を持っている人が、特に歳を取った世代に多そうです。それに対して、中国は、メディアが信用できない(=メディアは結局政府と同じで、政府の言いたいことを伝えているにすぎない)という考えが身に染み付いているので、相対的にネットから流れてきた情報の信頼性は高くなってしまう、というようなことが述べられています。

その結果、中国のネットユーザーで日本のネットをチェックする人たちは、日本のマスメディアが報道したことを信用せず(=日本政府の発表をマスメディアが垂れ流していると思っている)、日本のネットに書かれていることをより信用してしまう、のだということ。

逆に、日本人は、中国のマスメディアの報道を、日本のマスメディアに期待するようなレベルで正しいことを伝えていると思い込みがちだし、中国のネット発の情報を、日本のネットに書かれた平均的な情報の信頼度を基に、玉石混合で信頼しづらいものだ、と見てしまう、のだと。

日本と中国で、メディアの発信、ネットの発信を読み解く際には、その性格の違いをある程度踏まえて見ないと、そこの落とし穴に引っかかってしまう可能性がありそうだな、というのが本書を読んでの一番の収穫でした。